在来作物について

1.「在来作物」とは?

静岡在来作物研究会では、以下の3要件を満たすものとして「在来作物」を定義します[i]

①    ある地域で栽培されている作物で、世代間で継承されている。

②    栽培者自らの手でたねとり(種子の採取や栄養繁殖)が行われている。

③    特定の料理や用途に用いられている。

fig3 fig5
在来ニンニクの花
(静岡市葵区井川)
嘉永七寅年の御膳料理春編
(浜松市天竜区水窪)

2.なぜ在来作物が重要なのか?

在来作物とは、辞書によると「その地域で古くから栽培されてきた穀類、野菜、樹木などの農作物」(大辞泉)とされています。また、農学の分野では、「在来品種」「在来家畜」のように、科学的な品種改良が行われる以前の農作物を「在来」と呼んできました。これらの用法では、栽培されてきた歴史の古さや生物学的な性質が重視されており、②や③にあるような在来作物をめぐる多様な実践や、世代間の継承という点はそれほど強調されてきませんでした。

これに対して、静岡在来作物研究会が在来作物において重要だと考えるのが、生産から利用までのさまざまな「智慧の継承[ii]」です。在来作物には、先人によって築かれてきた農業に関わるさまざまな要素が埋め込まれており、在来作物の研究とは、私たちが先人から何を引き継いできたのか、そして、何を未来に遺すべきなのかを考えることに他なりません。

そこで注目するべきなのは、②の「たねとり[iii]」です。作物から「たね」を取って翌年に播くという作業は、もともと農業の根幹をなす営みであり、その過程では、単に同じ品種が継承されるだけでなく、新しい品種が生まれることもありました。多様な在来作物は、こうした営みによって不断に生成され、継承されてきたのです。「たねとり」には、よい「たね」(収穫量が多い、味がいい、土地にあっているなど)を選択するための高度な見極めの能力が必要とされます。しかし、種苗会社から高品位のF1(雑種第1代)品種の種を購入することが可能になった現在、「たねとり」の技術は、「お金で買う」ことで代替できるものになっており、急速に農の現場から失われようとしています。

このことは、③の定義にあるような、収穫した作物をどのように加工するか、また、どのような場面で食べるかといった在地の多様な農と食のかかわりをおびやかすものでもあります。在来作物とは、単なる作物であるだけでなく、人と自然のかかわりを通じて地域ごとに培われてきた「智慧」の結晶なのです。在来作物は、その栽培方法や利用方法などにおいて、近代的な農業とは異なる多様性と固有性をもっているという点で重要であり、世代間の「智慧の継承」という観点から、在来作物に関する研究と実践を行っていく必要があります。

参考

山形在来作物研究会 (http://zaisakuken.jp/)

財団法人地域活性化センター(2012)「事例紹介:山形県鶴岡市」『平成24年度地域活性化ガイドブック』

http://www.chiiki-dukuri-hyakka.or.jp/1_all/jirei/2013_guidebook/case/yamagata.html


[i] この定義は、在来作物研究の先進事例である「山形在来作物研究会」によるものを参考にしています。

[ii] 単なる知識だけではなく、言葉になりにくい人の身体感覚や文化と不可分に結びついた「智慧」の継承を指しています。

[iii] 種子による繁殖だけでなく栄養繁殖(種イモなど)も含んだものとして、ここでは「たね」と表現することにします。

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